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生麦盛り上げ隊のご紹介①(YOKOHAMA商工季報2021新年号)

生麦盛り上げ隊:商店街の成り立ちと現在の取り組み編

 京浜工業地帯と住宅街、商店街が共存する鶴見区生麦。誰もが歴史の授業で習った生麦事件を思い出すこの街で、「生麦盛り上げ隊」の隊長として奔走するのがヘアーサロン・ハッピーバーバーマツノ3代目・松野良明さんです。商店街組織とは異なる「生麦盛り上げ隊」とは? そこに集う人々の思いとは?
 松野さんに伺いました。

●すべてのはじまりは「まちゼミ」

生麦駅前通り商友会の加藤 二紀会長
「レディースファッションみその」を経営

 「いまから10年前、25歳のときに東京での理髪店の修業を終えて戻ってきたのですが、街が衰退していて驚きました。なんとかしたいと思ったものの、どうしたらいいのか分からなくて。そんな状態が5年ほど続きましたね」。
 転機は30歳を迎えた2015年。子どもが生まれ、築90年の自宅兼店舗を改築し、生麦駅前通り商友会に加盟しました。地域のために活動しよう、という思いを固めた時期だったと言います。
 「商店街に加盟した翌年、横浜商工会議所に小規模事業持続化補助金や、ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金の件でお世話になったことがきっかけで、まちゼミのことを知ったんです。それがすべての始まりでした」。

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生麦盛り上げ隊の隊長松野良明さん
(ご両親と一緒にハッピーバーバー
マツノを経営)

 まちゼミとは、商店主が地域住民に知識を伝えながら交流を図る無料のミニ講座。なにひとつイベントがなく、地域の方々に商店街の面白さをお伝えできていない現状を憂う中、「まちゼミで盛り上げたい」という思いに松野さんは突き動かされました。
 「まちゼミを考案した松井洋一郎さんの『売り手よし、買い手よし、地域よし、という“三方よし”の精神を大切に』という言葉が響きましたね」。
 しかし当時、まちゼミに関心を示した商店主はほんの10人ほど。松野さんは約80店舗を1人で訪ねてまわり、まちゼミへの参加を説きました。そうした努力が実り、2017年に約30店舗が参加しての「第1回・生麦deまちゼミ」が実現したのです。

●「生麦盛り上げ隊」誕生

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地域の歴史的お祭りである「蛇も蚊も祭り」からイメージした〝蛇も蚊もちゃん〟(上段ほか)。元々、「蛇も蚊も祭り」は疫病払いを祈念するお祭りであり、今般のコロナ禍の早期終息を願う!?。

 初のまちゼミ開催のために集まった若手を中心とした約30人の店主からは「既存の商店街組織とは別に、このメンバーで生麦を盛り上げていこう」という声があがりました。そこで誕生したのが任意団体「生麦盛り上げ隊」です。
 「まちゼミを企画したり『生麦盛り上げ隊』を立ち上げたりするなかで一番変わったのは、顔も知らなかった商店主同士が仲良くなれたことです。上の世代の皆さんも、いつも背中を押してくれるんですよ。生麦には、生麦駅前通り商友会、岸谷商栄会協同組合、花月園駅前通り花商会という3つの商店街組合があるのですが、そのうち2人の会長さんが『生麦盛り上げ隊』に参加して内側から支えてくださっています。ありがたいですね」。
 商店街全体で動くとなると温度差の異なる店舗間で足並みを揃えることに苦労するし、「生麦盛り上げ隊」だけでは補助金の申請もできず、資金繰りが難しい。“資金面で安心できて小回りもきく”という現状こそ、若手が存分に力を発揮できる条件が揃っているのです。
 「『生麦盛り上げ隊』のコンセプトは3つ。一つ目は、新規出店の店舗にやさしいまちづくり。新しいお店ができたら、必ずみんなで駆けつけて応援します。二つ目は、子どもにやさしいまちづくり。下の世代に何を残してやれるのかをいつも考えていますね。三つ目は、もっと街を盛り上げて、生麦駅が京急のエアポート急行の止まるような駅(街)にすること。急行が止まれば地価も上がりますからね」。
 「生麦deまちゼミ」は、すでに5回開催されました。2回目からは京急電鉄とキリンビールという地元の2大企業も参加。大手企業を巻き込んだまちゼミは、全国的にも珍しいケースです。

●2020年、コロナ禍での「生麦de事件まつり」

 10月31日〜11月6日には、感染症対策を徹底した上でフードのテイクアウトを中心に小売店やサービス系店舗も参加したイベント「第2回 生麦de事件まつり」を決行。誰もが“イベントロス”だったこと、地元に楽しみを見い出す人が増えたことなど、コロナ禍ならではの背景もあり、どの店舗でも売り切れが続出するほどの盛り上がりが見られました。
 「開催については悩みましたね。何人もの商店主さんから『経営がかなり厳しい状況だから、盛り上げてほしい』と言われて決断しました。工夫したのは、開催期間を長めに設定して、参加店舗は、その間であればいつ参加してもOKとしたことです。密を避けることもできるし、“できるときに無理なく”ということで店舗の負担も減らせますから。これはまちゼミで学んだやり方なんですよ。テイクアウトの容器を無償提供したり、鶴見区のイベント助成金を使うことで参加費を無料にしたりしたことで参加へのハードルが下がり、60店舗以上参加という結果につながったのだと思います」。

参加飲食店は店頭でテイクアウト商品を販売。
丸い容器は全店共通にし、重ねやすいように工夫
歩道橋脇の省スペースを活用したクレープのキッチンカー。
多くの方にお越しいただきました

 「生麦de事件まつり」というインパクトのあるネーミングからは、生麦事件を街のアイデンティティとする思いも伝わってきます。
 「生麦事件は薩英戦争の引き金になりましたが、その後、薩摩藩とイギリスは仲良くなって貿易をするんですよね。あれは、実は日本が国際国家の仲間入りをするきっかけになった事件なんです。地元のみんなには、そんなことも知ってほしい。だから、生麦事件についてのうんちくを書いたプレートを作って各店舗に貼りました。ただのテイクアウトイベントじゃないんですよ(笑)」。
 今後は、「生麦オリジナルのクラフトビールをつくりたい、そのためにクラウドファンディングにも挑戦したい」と松野さん。その背中を押すのは我が子をはじめとする街の子どもたちの存在です。
 「生麦は大きな可能性を秘めた街。将来、子どもたちがこの街で仕事をしたいと思ってくれたらうれしいですよね。そのためにも、街を疲弊させるわけにはいきません。父親として、がんばらなくちゃいけないですね」。

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参加店舗の入り口に「生麦事件」の
情報を掲示(左下桃色枠)