反町駅前通り商店街のご紹介③(YOKOHAMA商工季報2020新年号)
反町駅前通り商店街:今後の商店街編
横浜駅から徒歩約15分という立地にありながら、下町情緒を残す反町駅前通り商店街。再開発の進む横浜駅周辺の賑わいが大きくなるにつれて、商店街ならではの魅力が際立ちつつあります。そんな反町のこれからのあり方について、現役世代のお2人にお話を伺いました。
●豊かさを提供する「ナギコーヒー(NAGI COFFEE)」
まずは、オープン3年目を迎える「ナギコーヒー」へ。ドアを開けると、店主の中村公平さんが笑顔で迎えてくれました。店内には温かな光が満ち、ゆったりとした時間が流れています。
「毎朝4時に出勤して、その日の分の豆を焙煎するのが日課です。焙煎したての豆で淹れるコーヒーは格別ですよ。数日に一度、大量に焙煎する大規模店のコーヒーとは違います。何気なく入ったお客さんに、『うまい!』って感動してもらえるのが何よりですね」。
一杯のコーヒーに思いを込める中村さん、実は数年前まで劇団員として活躍していました。本業の合間に喫茶店のアルバイトで学んだ焙煎、全国公演中に立ち寄った各地の喫茶店で見聞きしたことを糧に立ち上げたのが、ナギコーヒーです。
「喫茶という文化が素晴らしいのは、コーヒーだけでなく、お客さんが気持ちを切り替えられるような空間と時間を提供しているから。いまは効率重視の店ばかりが増えて、豊かな時間の積み重ねを感じさせる喫茶店が減りましたね」。
失われつつある喫茶文化を取り戻したい。そんな思いを込めて中村さんが選んだのが反町でした。縁のなかった街ですが、物件を見に来て一目惚れしたのだそうです。
「反町は、かつて非常に賑わっていた街です。いまは当時の賑わいが鳴りを潜めていますが、チェーン店に浸食されていないというのは、かつての地脈が残っているということ。〝何か〟を仕掛ければ、実を結ぶポテンシャルがあるということです。〝何か〟というのは、スピードや効率ではなく、〝豊かさを生むもの〟ですね。いまの世の中は流通ありきで、大量の商品を安く売りさばく時代。個店にとっては厳しい状況ですが、品質の高さや人との繋がりを提供できる良さはかえって際立ちます。ここには横浜にない良さがありますよ」。
オープンして間もない頃から、隣接する3店舗と合同で毎月一回「蚤の市」を開催してきました。各店舗が無理なく「蚤の市」を続けられるような仕組みをつくり、お客さんを笑顔にする小さなイベントです。
「勢いよく動かしたものにはどこかでひずみが生じるので、あえて大きく動かず、細々と続けています。小さな動きが少しずつ繋がっていけば、この街は変わりますよ。かつてここにあったものを、いまの時代に合った形で再構築していきたいですね」。
そう語る中村さん、店舗の立地は商店街から少し外れていますが、賛助会員として街のために尽力しています。

「NAGI COFFEE」
(写真は、中村公平さん(右)と奥様)
●24時間つながる「大丸薬局」
もう一人のキーパーソンは50年近い歴史を持つ「大丸薬局」の2代目店主、大野賢二さん。店頭での接客の傍ら、全国各地で漢方についての講演も行う多忙な毎日を送っています。
「当店は漢方をメインに扱っていて、ちょっとした相談にも1時間ほどのカウンセリングで対応します。ドラッグストアやインターネット販売と比べたら品揃えや価格ではかないませんが、相談しながら商品を選んでいただけるのは個店の良さですね」。
横浜駅再開発によって人が流れてくることを期待しつつも、〝横浜化〟を目指すわけではないと言います。
「たとえば、お店のLINEグループに登録されている100人ほどのお客さんには、体調が悪化したら『24時間いつでも連絡してください』と伝えてあります。休業日でもアドバイスくらいはできますから。こうした〝個店にしかできないこと〟を探すのが今後のカギですね」。
現在、商店街の副会長を務める大野さん。商店街をきれいに保つため、月二回、清掃活動に励み、その様子をSNSに掲載して周知するなど、こまめに活動しています。
「商店街の横のつながりを保つことが課題。我々役員の取り組みをもっと発信して、商店街として活動することのメリットを皆さんにご理解いただく必要があると思っています」と抱負を述べられていました。

大丸薬局
●課題は次世代づくり
こうした次世代の活躍を支えるのは、商店街のために〝常に走り続けている〟会長の斉藤隆さんです。
「僕は駅の東側、桐畑交差点までの通りに可能性を感じています。ここにはラーメン店を中心に飲食店が集積していて、〝ラーメンストリート〟として知られています。もっとアピールして、横浜でも有数の〝ラーメン店が集結するストリート〟にしたいですね」。
中村さん、大野さんを始めとする若手にも大いに期待しています。お二人とも、この反町周辺を心癒される住みやすい街にするため、日々の営業の中で、個店の強みを活かしながら、どのような協力ができるのかを考える方々でした。
こうした小さいながらも着実に前に進み続ける次世代に対し、斉藤会長もエールを送ります。「いまの課題は次世代づくり、仲間づくり。今後を担う若手には、意見をどんどん出して、街を盛り上げていってほしいですね」と街の発展に資する若手の活躍に大きな期待を寄せておられました。


フェスタの様子。当日は、高島山トンネル内で、「トンネル
ワインフェスタ2019」を同時開催。
