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元町クラフトマンシップ・ストリートのご紹介①(YOKOHAMA商工季報2021新年号)

元町クラフトマンシップ・ストリート:
商店街の成り立ちとまちづくりの特徴

 幕末、来日した外国人たちが暮らした山手居留地。異国情緒漂うこの居留地に隣接し、ともに街を形づくってきたのが元町です。ここで“表通り”と呼ばれるのは1970年代に“ハマトラファッション”で一斉を風靡した「元町通り(元町ショッピングストリート)」。対して、“裏通り”であることに誇りをもち続けてきたのが「元町仲通り」を中心とする「元町クラフトマンシップ・ストリート」です。今回はその成り立ちと個性ついて、商店街振興組合・元町クラフトマンシップ・ストリート理事長・依知川光明さん、副理事長・北川裕紀さん、副理事長・鈴木めぐみさん、大木淳さん(都市デザイナー)の4名に座談会形式でお話していただきました。

元町CSを支える依知川理事長(右から2人目)を中心に、北川副理事長(左)、鈴木副理事長(左から2人目)、大木氏(右)

●「元町仲通り会」から「元町クラフトマンシップ・ストリート」へ

 元町通りと元町仲通りには「外国人向けに家具や衣類を販売する元町通り」と「元町通りで販売する商品を製造する元町仲通り」という個性の違いが当初から存在していました。元町仲通りは職人たちが働き暮らす、まさに“クラフトマンシップ”溢れる通りだったのです。
 「90年代になると元町仲通りの方も店舗で賑わうようになり、組織としてやっていこうという意識が高まりました。そこで、山手につながる代官坂なども巻き込んで“面”で攻めようということになり、1994年に任意団体・元町仲通り会を立ち上げたのです。通りとしての個性が一層際立ち始めたのは、この時期ですね(依知川)」。
 それから数年、クラフト系のショップや飲食店など“職人”の営む店舗がさらに増え、同時に街路整備についての意見交換も始まりました。
 「街の景観を整えることは目的ではなくて手段。本当の目的は、まちの皆さんがまちづくりに関われる体制を強化していくことでした(大木)」。
 街路整備費用の3/4にあたる額を補助金で賄うためには、商店街組織として法人格を取得しなければなりません。そこで2005年、仲通り会は「商店街振興組合元町クラフトマンシップ・ストリート」に生まれ変わりました。
 「立ち上げの時には担当者が全店舗をまわって説得しました。商店街負担分の道路整備費は全店が負担。店舗の平米数や営業の状況に応じて、かなり細かく金額を決めましたね(北川)」。

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元町クラフトマンシップ・ストリートの位置図

●努力の賜である街の景観美が賑わいを呼ぶ

 翌2006年には横浜市ライブタウン街路整備事業として、石畳を敷いたり、日光を遮るほどに張り巡らされていた電線を整理するなど大規模な整備を実施。さらに、法人化に先立って制定した独自の「街づくり協定」を徹底的に周知することで、景観を整えてきました。
 「たとえば、電柱は通りのテーマカラーである濃いグリーンに統一した上で、すべて敷地のなかに入れてもらっています。建物を改築する時に、1階部分をセットバックすることも必須。いずれ全店舗がセットバックすれば、通りはかなり広くなりますよ。各店舗の看板も統一感を出すために、上限3万円の助成金を使ってつくってもらっているんです(北川)」。
 細部にわたって決められた規定が遵守されている商店街は稀です。なぜここまで徹底できるのでしょうか?
 「新規出店される方は“クラフトマンシップストリート”という名前や、街並みの美しさに惹かれて来る方がほとんど。だから意識が高いんですよ。地元の不動産屋さんも、新規出店者に商店会に所属しなければならないことや、規定を遵守しなければならないことを最初にきっちり伝えてくださっています(鈴木)」。
 「ウチは協同組合ではなく振興組合なので、一般住民の方も加盟してくださっているんです。だから、規定を街全体に周知しやすいんですよ。景観がここまで美しく整ったのは、ひとりひとりの協力の賜ですね(依知川)」。
 仲通り会が発足した当初50軒ほどだった加盟店舗は法人化に際して約100店舗に、現在は200店舗を超えています。
 「店舗が増えたのは、地権者の皆さんの協力が大きいと思います。改築の時など、元町にふさわしい店舗を考えてくれています。代官坂などの坂道には、まだ使われていない物件もあるので、出店のポテンシャルは高い街だと思います。(大木)」。

●シェフの“職人魂”を広く伝える「フードフェア」

 良質な飲食店が軒を連ねるのも「元町クラフトマンシップ・ストリート」の特徴のひとつ。その魅力を周知するために、2000年にスタートしたのが“作り手の見える街、五感に訴える街を体感できる2日間”を謳い文句にした「フードフェア」です。いまでは元町通りの協力もあり、毎年2万人が集まる大イベントに成長しました。
 「お店の良さを知ってもらえるように、各店舗には“いつも通り”の料理を出してもらっています。来場者がたくさん食べ歩けるように、一皿5百円程度でね(北川)」。
 「クオリティの高い料理を出せば、後日改めて来てくれるお客さんもいます。フェアそのものが広告になるんですよ。最近は、元町以外の大手飲食店から出店を打診されることもありますが、すべて断っています。この通りの良さを知ってほしいという当初の目的を見失って欲に走ったら、おしまいですから(依知川)」このように、依知川理事長をはじめフェアにかかわる人たちが、地域固有のイベントとしてフードフェアを大切にする心が、多くの方に愛されるイベントとして確立した要因ではないでしょうか。 今年はコロナ禍により「フードフェア」は見送られました。ここが踏ん張りどころだと4人は口を揃えます。
 「みなとみらいが“新市街”であるのに対して元町は“旧市街”。いつもの店にいけば、いつもの店主が笑顔で迎えてくれる。そんな旧市街ゆえのぬくもりは、まさに時代が求めるものです。これからの時代、お客さまと真摯に向き合い続けてきた店が生き残っていくと思います。その点、この街は変わっていないんですよ。心意気は最初からずっと“クラフトマンシップ”です(依知川)」。
 つくる人、提供する人の見えるお店が集まる元町クラフトマンシップ・ストリート。良いものを長く使う、お気に入りのお店に長く通う顧客も多い商店街。街並みの整備は、そんな店舗の集う商店街の雰囲気づくりに貢献しているのではないでしょうか。一つ一つの小さな努力や街への愛着が街並みづくり、ひいては元町クラフトマンシップ・ストリートを支えます。

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今年のフードフェアはコロナ禍で中止となり、代替イベントとして「岩手一戸の牛肉と野菜を食す! 2WEEKS」を開催。6店舗が参加し、一戸町の牛肉と野菜を使ったメニューを期間限定で提供しました(左から霧笛楼、横濱人、ポンパドウルで提供された料理・商品)。